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新メニューのグランから見えてくる日本マクドナルドの迷走

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写真は、新発売されたグラン・シリーズのうちのグラン・てりやき。

 

以前このブログで、日本マクドナルド最大の美味バーガーは、ダブルクォーターパウンダー・チーズだと書いた。マクドナルドはクォーターパウンダーをもっと積極的にアピールしなさいと。するとそれで呪いがかかったのかどうか知らないが、日本マクドナルド社は、クォーターパウンダー・チーズと、ダブルクォーターパウンダー・チーズの2メニューをレギュラーメニューから廃止するという電撃的な発表を行った。

butao.hatenadiary.com

日本マクドナルド社に裏切られるのはこれで何度目だろうか。日本マクドナルド史上コスパ最高傑作といわれたマックポークが廃止された時も頭がクラクラしたし、満を持して本国アメリカのメニューから導入されたマックダブル(ダブルチーズバーガーからチーズを一枚抜いただけなのに190円という神がかりバーガー)がいきなり抹消の憂き目に遭わされた時も怒りを覚えて二度とマクドナルドに行くものかと思ったものだ。近年で良かった展開といえば、やはりアメリカメニューから導入されたビッグブレックファストの発売くらいだろうか。内容はしょぼかったけれど。

 

そして今回のクォーターパウンダーチーズ兄弟のリストラ。単品で520円もするハンバーガーは500円の壁が高すぎて受け入れられないとかいう理由だそうだが、本当のところはわからない。抜けたクォーターパウンダーの代わりに新たに登場したグランというバーガーは、一番高いグランクラブハウスで490円という価格設定だから、500円の壁を意識しているのは確かみたいだ。

www.itmedia.co.jp

 

じゃあその新しく登場したグランクラブハウスとやらは、ダブルクォーターパウンダー・チーズの520円に対して、どれほどのお得感を演出したというのだろうか。もちろん気になって自腹で試食するわけだ。

 

酷かった。グランクラブハウスなんてご大層な名前がついていたが、ダブルクォーターパウンダー・チーズとは比較するのも悲しくなるくらいの、ちっぽけでちんけなバーガーだった。たった30円を安くしただけで、ここまで物量に差をつけられなきゃならんのだろうか。使われていたハンバーグは、クォーターパウンダー1枚のサイズにも遠く及ばない。

 

「おいおい、たった30円安いだけで正気か!ダブルクォーターパウンダー・チーズは、クォーターパウンダーが2枚も使われていたんだぞ!パンからはみ出る大きさだったんだぞ!どうしてこうなったんだ!」と頭の中で江原正士声の面白黒人が叫んでいた。500円の壁がどうのこうのといっていたくせに、廃止したダブルクォーターパウンダー・チーズのコスパの良さを、改めて痛感させるバーガーを投入してどうするのかと。

 

このグランシリーズの自慢は、ハンバーグと、パンにあるという。だからボリュームの無さは我慢しろいうことらしい。これはつまり、従来からあるメニューのハンバーグとパンの質には自信が無いというメッセージである。従来からあるハンバーガーが大好きで、わざわざマクドナルドに足を運んでいた客は、どんな顔をして食べれば良いのだろうか。

 

肝心の質が自慢のグランのハンバーグの味だけど、なんだかはっきりせずぼやけたものだ。よく言えば上品な味のハンバーガーともいえる。そういえばモスバーガーなどで使われているハンバーグに近いような気がする。グランのパンは、もっちりとしていて、噛みごたえがあり、これはフレッシュネスバーガーかなんかのパンに似ている気がする。

 

味としては悪くは無い。モスバーガーとフレッシュネスバーガーの中間みたいな味だから、まずいハンバーガーではありえないだろう。490円という価格も、モスバーガーやフレッシュネスバーガーの価格帯からいえば、妥当なラインを出してきたのではないか。

 

しかしだ。最大の問題は「なんでマクドナルドまで足を運んで、モスバーガーやフレッシュネスバーガーのまがい物を注文しなきゃならないのか」ということ。しかも、モスバーガーやフレッシュネスバーガーと同じような金額を出して、だ。だったらモスバーガーか、フレッシュネスバーガーに行くだろう。常識で考えれば。

 

マクドの経営陣の中にはこんな歪んだ考えが蔓延しているのかもしれない。

「マクドナルドの店舗数は、モスバーガーやフレッシュネスバーガーを遥かに凌ぐ。だったら、マクドでモスバーガーやフレッシュネスバーガーが食べれたら最強なんじゃないか?」

 

たしかにマクドナルドの店舗数2898という数字は、1359店舗のモスバーガーや、158店舗しかないフレッシュネスバーガーを大きく上回っている。そりゃ2倍以上の店舗数を誇るマクドナルドで、モスやフレッシュネスみたいなハンバーガーが食べれるなら利便性は高いようにも思う。しかし何かが間違っているような気もする。

 

ここで結論を急ぐのも良いけれど、ちょっと深呼吸して、あらためて数字のいろいろのことを確認しておきたい。

 

とりあえず大事なのは、マクドナルドの売上高についてだ。2012年の2947億1000万円から、回復基調にはあるもの2016年は2266億4600万円になってしまった。この4年で700億近い売上を失っており、いってみればかなり低迷していると言えよう。一般的に流布されている「マクドナルドが苦境に立たされている」というイメージは概ねでいえば正しい。

 

一方で業界第二位のシェアで、マクドナルドと常に対比されるライバルともいえるモスバーガーは、2012年に626億7200万円だったのが、2016年には711億1300万円と推移している。かなり堅調に成長しているとは言える。「モスは支持されている」という印象は間違ってはいない。

 

他のハンバーガーチェーンである、ロッテリアやバーガーキング(どちらも経営はロッテ)や、フレッシュネスバーガーなんていうのはそれよりずっと以下の存在なので、ここではあまり考慮にいれなくて良さそう。ずっと以下の存在だということだけ頭に入れておけば十分だ。

 

さて「マクドナルドが4年で失った売上の700億円はどこへ行ったか?」という問題であるが、上記の数字を見ても、モスバーガーはたった100億しか売上を伸ばしていないから、仮にマクドの客がモスバーガーに流れたといったって、たかが知れている割合だと推測する。

 

そもそもマクドが失った売上だけで、モス全体の売上に匹敵する金額なのであるから、そんなことが起きていたとしたら、いきなりモスの売上が倍増していたり、バーガーキングなりフレッシュネスバーガーなりが、モスに匹敵するかそれを凌ぐ売上で業界2位に躍進するとかいった異常事態になっているはずだ。しかし依然として2位の位置にいるのはモスだし、他のバーガーが好調だったとしても、金額としてはマクドが失った売上には遠く及ばないだろう。だいいち店舗数が違いすぎるのだから当然だ。

 

だとすれば考えられるのは、マクドのかつての売上は、同業他社のハンバーガーチェーンに奪われたというより、幅広い意味での様々な外食産業に奪われたのか、外食産業全体の動向の影響を含んでいるのかのどちらかであろうということ。おそらく両方の理由によって売上が減じたのであって、同業他社への客の流出というのはそれほど大きな要因とはいえないということだ。そもそも、店舗数だってどんどん減らしている。この4年間だけでも10%は減っているのだ。700億円のかなりの割合のところが店舗数減による影響ではなかろうか。

 

大事なことなので確認しておくが、2017年のこの時点ではマクドナルドは日本最大のハンバーガーチェーンであり、その売上は圧倒的ともいえるものだ。それがどれほど圧倒的かというと、2015年度の外食産業ランキングでも第4位に位置しており、マクドよりも売上があったのは、すき家のゼンショーと、ガストのすかいらーくと、甘太郎や贔屓屋のコロワイドグループしかない。売上トップ10は1000億円以上の売上の企業で占められており、マクドナルドのたかが三分の一程度の売上高しかないモスフードサービスなんかが食い込む余地はどこにもない。

 

ものすごく大雑把な分析をすれば、マクドナルドはモスバーガーの3倍の顧客がいるということにもなる。マクドの店舗数が、モスバーガーの3倍近い数で、売上も3倍くらいであるし、当たらずといえども遠からず、妥当な推測といえるのではないか。

 

さて、日々マクドナルドに足を運んでいる、モスバーガーの3倍くらいはいるであろう顧客たちは、なぜマクドナルドに足を運んでいるのだろうか。近くにモスバーガーが無いから仕方なくマクドナルドに行っているのだろうか。そんなわけがあるまい。本当にそうだったら、モスバーガーは今すぐ店舗を3倍に増やした方が良いということになる。

 

モスバーガーの3倍もの人間が、マクドナルドに足を運んでハンバーガーを食べ続ける最大の理由は、単純にマクドナルドが好きだからだ。店が多くて便利だからマクドナルドを食べるのでも、モスバーガーが高くて買えないからマクドナルドで我慢しているわけでもなく、単にマクドナルドの味とブランドが好きなのだ。単に安くお腹を満たしたいというだけなら、今どきスーパーでもコンビニでもハンバーガーは売っている。というか、ハンバーガーじゃなくても良い。立ち食いうどんでもなんでもある。

 

もし、マクドナルドの顧客のうちのかなりの割合が、実はモスバーガーが好きなんだとかいう事実があるのなら、モスバーガーが近くにある地域の店舗はぜんぶ潰れているはずだ。そしてモスバーガーは長蛇の列になっているに違いない。しかしそんな光景は見たことがない。

 

だからマクドナルドの経営陣がするべきことは、マクドナルドの味と雰囲気が好きな顧客を、十分に満足させるサービスを提供し続けることではないか。もともとマクドが好きな人間に、もうちょっとマクドを利用する回数を増やそうと思うようなサービスだ。最初からマクドを毛嫌いして、モスバーガーなどを利用していた層に、マクドに来てもらうようなサービスなんかしてもしょうがない。

 

しかしどうも、日本マクドナルドの経営陣は、よりにもよってマクドナルドのハンバーガーの味と雰囲気が大嫌いらしい。モスバーガーの3倍くらいの顧客が、マクドナルドのハンバーガーの味を求めてやってくる現実に我慢が出来ないとしか思えない。

 

2年くらい前だったか。新商品のハンバーガーのプロモーションのCMを見た時に唖然としていた。どんなハンバーガーか忘れたけど、ちょっと高級路線を狙ったやつだった。CMではそれを試食したテスターたちが口々に「美味しい!」「マクドナルドじゃないみたい!」とか言うのだ。じゃあ今のマクドナルドに満足しているファンは「ハンバーガーの味がわかってない奴ら」ということか。

 

モスバーガーとか他のハンバーガーが好きな人が、マクドナルドのハンバーガーの味をくさすというケースはいくらでもある。そんなもん、味の好みは人それぞれだから仕方がない話だ。マクドナルドの味が気に入らないのなら利用しなければ良い。

 

僕はマクドナルドの味が世界最強というつもりはない。場合によってはバーガーキングのワッパーの方が好きだと常々言っているし、世界にはいくらでも美味しいハンバーガーがあるに違いない。それでもマクドナルドに行く理由はマクドナルドの味を求めて行っているのだ。だからマクドナルドの味をとやかく言う人間なんかほっておくにこしたことはないと思っている。

 

しかしだ。よりにもよっってマクドナルドを経営している会社自体が、自分たちの商品の味やブランドを支持しているファンをこけにするのだ。しかもそのファンの数というのは、外食産業でもトップ5には確実に入るであろう多数派であるにもかかわらず喧嘩上等。こんなビジネスの方針は、革命的にも程がある。

 

なんか思い出しただけで腹たってきたので、そのプロモーションのハンバーガーがどんなやつだったか色々と検索していたら、わりにすぐに出てきた。そのバーガーとは、クラブハウスバーガー・ビーフというやつとクラブハウスバーガー・チキンというやつだった。ぜんぜん意識はしていなかったが、どうも今回のグラン・クラブハウスなどの前身となったバーガーだったようだ。だからグランのプロモーションも前回を踏襲して「マクド嫌いに褒められるバーガー」というのを前面に押し出しているそうだ。経営陣の脳みそがモスバーガーのソースまみれになっているとしか思えない。

 

別にモスバーガーやフレッシュネスバーガーの味が悪いと言いたいわけではない。ただ、マクドナルドの味のファンは異様に多いという事実があるだけだ。多いから偉いとは思わないけれど、多数いるお得意様に喧嘩を売って、少数派である非顧客に媚びを売るというのは商売的には損しか無いと思う。何を考えているのかという話だ。

 

今のマクドナルドの経営陣は、お金儲けよりも「マクドナルドじゃない味のバーガーを普及させる」「マクドナルドの味は抹殺する」ということに情熱を燃やしているようにしか思えない。売れているAppleIIを殺してまでMacintoshの売り込みに全力を傾けたスティーブ・ジョブズかよと思う。もっとも、彼らの理想とするバーガーは、自分らのブランドの三分の一くらいしか売れていない競合店の味に近かったりする。自分たちならもっとたくさん売れると思っているのだろうか。

 

モスバーガーやフレッシュネスバーガーとマクドナルドが並んで営業していたら、僕は迷わずマクドナルドに行くくらいにはマクドナルドを支持している。何度もいうがダブルクォーターパウンダー・チーズは、マクドナルドを超えたマクドナルドというべき傑作バーガーだった。バーガーキングくらいのボリュームがあるのに、間違いなくマクドナルドの味わいだった。しかしグランのどこにマクドナルドっぽさがあるんだろうか?パンも、ハンバーグも、値段も、マクドナルド感ゼロ。マクドナルドっぽくない味というコンセプトで作られたのだから仕方がないが。

 

グランの味がまずいとは別に言わない。味はフレッシュネスバーガーとモスバーガーの合いの子みたいなもんだからぶっちゃけ美味い。でもマクドナルドでこれを食わされたって困る。そんなのが食いたいなら、最初からモスバーガーなどに頻繁に足を運んでいたはずだ。でも我々はモスバーガーじゃなくてマクドナルドを選んだということだ。べつにマクドナルドがマクドナルドらしくないバーガーに挑戦するなとかいう意味じゃない。ただ、現状のマクドナルドに、われわれ顧客が求めているものは、少なくともきっちりと提供して欲しいと思っているだけだ。

 

はっきりいって、クォーターパウンダーを殺すみたいな真似をして登場してきたグランに対する印象は最悪である。だから、味のクオリティとかではなく、コンセプトや好みなど総合的に加味したうえで「日本マクドナルド史上で最大の駄バーガー」と呼ばせてもらいたい。いちおう3種類とも食べたが二度と食べたくない。気分が悪い。

 

マクドファンというのは、何度痛い目にあわされても、やはりマクドの事が気になって、しばらくするとのこのこと会いに行ってしまう。世間によくいるDV被害にあっている女性に例えられがちである。またはスティーブ・ジョブズの相棒だったスティーブ・ウォズニアックみたいなもんだ。(繰り返しこういうたとえが出てくるのは、最近映画『スティーブ・ジョブズ』を何度も観たから)

スティーブ・ジョブズ (吹替版)

スティーブ・ジョブズ (吹替版)

 

マクドナルドファンというのは、赤と黄色のmの字の看板を見てしまうと、ちょっと心配になって定期的にふらふらと覗いてしまう。そしてよせば良いのにグランなんていう新作の駄バーガーを試してしまう哀しい生物だ。

 

割引クーポン券が誤差クーポン券と化したときも、マックフルーリーが小さくてしょぼくなったときも、マックポーク販売終了のときも、メニュー表が改悪されて見辛くなったときも、マックダブルが抹消されたときもそうだった。そして今回のクォーターパウンダー終了騒動も。なんど打ちのめされても、そのたびに起き上がりmの看板を目指してしまうのだ。

 

マクドナルド経営陣は、毎年マクドナルドに2000億円以上の売上を提供している大勢の、そして長年の、マクドナルドファンの気持ちに少しは忖度していただきたい。それがマクドナルド再生の最短の道ではないか。なんで今いる客を大切にせず、それどころかバカにさえして、より少ないパイを開拓しようとするのか理解に苦しむ。

 

日本マクドナルド経営陣が、マクドナルドじゃない味のハンバーガー屋を目指したいというならば別に止めはしない。700億円くらいの売上のよりコンパクトな商売に鞍替えしたいというならそれはそれで一つの道かもしれない。でも、それだったらマクドナルドの看板は返上していただきたい。マクドナルドはマクドナルドの味が好きな人が経営するべきではないか。マクドナルドのフランチャイズをやりたい会社はいくらでもありそうだ。もしかしたらモスフードサービスとか、ロッテが、マクドナルドのフランチャイズ権を買ってくれるかもしれない。

 

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 最高のマクドナルド映画のひとつとも言える名作。

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