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大阪人は美味いお好み焼きになかなかありつけない!?

大阪のお好み焼きといえば名物だし、今時は日本全国で食べることができるし知らぬ者はいないはずだ。それに対して広島のお好み焼きはクレープ状の皮とキャベツの重ね焼きが独特で、「お好み焼きとして変わり種やなあ」などと子供の頃には思っていたが、日本全国をわりと旅するようになって分かったことがある。

 

それは、大阪以外の地域にある古くからの土着のお好み焼きというのは、皮をクレープ状に焼いて具をのせるものが非常に多いというか、ほとんどそればっかりだったこと。キャベツや具を混ぜこぜにしてホットケーキ状にして焼くのは大阪くらいしか聞いたことがない。

 

大阪府のお隣の兵庫県の古い店で出すお好み焼きの一種「にくてん(肉天)」というのもクレープ状のお好み焼きだった。そういえばお好み焼きとは別に、細々と関西に存在する「一銭洋食」なんてのもクレープ状だ。つまり広島のスタイルのお好み焼きは変わり種どころか全国スタンダードに近いのだけど、大阪のお好み焼きの勢力が強すぎたせいで、そう思えてしまっただけだった。しかも大阪にずっと住んでると、よその地域のお好み焼きには目が向かない。

 

しかし……すると各地に伝わるクレープ状のお好み焼きって一体なんなんだろ?というぼんやりとした疑問がずっと僕の心の隅にあったのだが、『お好み焼きの戦前史』『お好み焼きの物語』という近年の研究本がその疑問を氷塊させてくれた。ものすごくかいつまんで説明すると、お好み焼きというのは大阪で発明されたものではなく、戦前の東京で生まれて全国にひろまった食べ物だったのだ。その時に各地で作られたのが、一銭洋食をはじめとしたクレープ状のやつらしい。兵庫の肉天もその一種だった(肉天という謎のネーミングについてもその本で解明される)。

 

なんということだ。ものすごい合点がいった。そのとき大阪のお好み焼き店では、謎の突然変異が起きてホットケーキ状のやつが開発されて一番人気になって、それが全国にさらに伝播されていき「お好み焼きといえば大阪!」と言われるようになったわけだ。詳しい経緯は本にすべて書いてるのでぜひ読んで欲しい。綿密な史料調査の成果に目から鱗に違いない。

お好み焼きの戦前史

お好み焼きの戦前史

 

 

さて、長々と前置きを書いたが、かようなまでに僕はお好み焼きというものにそれなり思い入れがあることを言いたかった。関西人一般レベルくらいには。さらにお好み焼きの歴史を知ることで、余計に各地のさまざまなタイプのお好み焼きに愛着が持てるようになったかもしれない。今まではそこまで気に留めてなかった些細な違いにも、なにかとときめくようになった。単に美味い不味いというよりも、「こういう焼き方をするところは、戦前のお好み焼きの遺伝子を残していて貴重やぞ?」みたいな視点も生まれてきた。なんでもそうだが、物事は知れば知るほど面白くなってくる。

 

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京橋の晃ちゃんというお店を紹介したい。近年の僕の中で「美味いなあ」と思えるお好み焼きを出している一店であった。ずっと知らなかったんだが、店構えが気になりすぎて数年前に入ってみたら、やたら美味かったという。

 

余談だけど、美味いお好み焼きとか、美味いたこ焼き屋とか、ことさら情報を仕入れて探す大阪人というのは少ないと思う。せいぜい近所で使うお店のなかで、ここは美味いとかこれは安いとかその程度。

 

これって香川のうどんにしろ、広島のお好み焼きにしろ、沖縄の沖縄そばにしろ、現地人の対応ってそんなもんじゃなかろうか。観光客の方が名店とか言われるものにやたら詳しいみたいな。僕はお好み焼きとかに関してはまさにそれだったのだ。だから、たまに美味いお好み焼き店に出会っても、「たまたま入った」みたいなことでしか無い。だもんで、この晃ちゃんも、たまたま遭遇しただけ。普段からお好み焼き屋を探したりはしてはなかったのだ。それで何気なく焼きそば頼んでも美味いし、お好み焼きも美味いしでびっくりしたのだった。大阪人のなかで、心底から満足する美味いお好み焼きにありついてる人は意外に少ないと思う。

 

じゃあ、それからこのお店に足繁く通ったのかというと、そうでもなくて、これだけ美味いからだろうけど、かなりの人気店らしくいつもカウンターは満杯。鰻の寝床みたいな店なんで実に入り辛い。定期的に覗きにいって、空いてる時だけ入るみたいなことしかできてなかった。


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しかし転機が訪れる。このコロナだ。晃ちゃんもモロに影響受けたっぽくて、めっちゃ行きやすい店になっていた。これをどうとらえたら良いのやら。心苦しいけど、自分はいつでもふらっと入れるのは嬉しかったので、暇を見つけては行くようにしている。ここは生ビール以外は小瓶ビールしかない。お好み焼きでそんなガブ飲みしないので自分は小瓶で十分。安いし。これで小瓶らしくキンキンに冷えてたら何本も飲みそうだが、そういうことはないのである意味では安心か?


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これが焼きそばだ。看板で推してるだけあって美味い。ちょい太麺系で。焼きそばは太麺も細麺も美味いけど、あんまり麺が主張してないやつは凡庸なものが多い気がする。つまみながら飲んでも良いし、ただ食べても満足できる。


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良い具合に主張のある焼きそばだと思う。これは食べにくる価値がありますな。


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焼きそばにするかお好み焼きにするか迷ってしまう店だけど、迷ったときには両方食べてみるのも手だ。ちょうどこちらには、「素焼き」という超シンプルなお好み焼きがあったので頼んでみた。豚玉とかイカ玉とかいう以前の素焼き。なかなか珍しい。


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この店のお好み焼きは、皮状に焼いた粉の上にキャベツなどの最低限の具材も盛りつけてさらに粉でとじたようなスタイルになっており、完全なホットケーキタイプになる一歩手前のような作り方。これが野菜のみずみずしさを堪能できて美味い。そして卵すらも拒否する素焼きというのも味わい深い。お好み焼きの原点に触れるかのような、駄菓子的な素朴さがある。こういう焼き方を実践してくれるところは年々減っていっている。ここは洋食焼きもメニューにあるくらいだから、関西お好み焼きの系譜の押さえ方は半端ではない。


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モダン焼きを頼んでも美味いのだ。モダン焼きを頼むと、うってかわりしっかりと固めて焼いたホットケーキ状のやつを、焼きそばの上にドンと落として合体。表面をパリパリにしてくれて泣かせる。ただでさえ焼きそばとお好み焼きの美味い店なので、合体させて弱くなるわけがない。

 

モダン焼きもどこでもあるメニューかと思ってたら、最近は減ってきたと言われてハッとした。もちろんお好み焼きにうどんやそばをトッピングするオプションは、今も多くの店で採用され続けているが、モダン焼きという言い方はしなくなっているということ。もう万博の時代に作られたといわれるモダン焼きなので、そんなカビの生えたメニューに対して何がモダンなんだと言われたら返す言葉もないのだけど、無くなってきてると言われればモダン焼きを掲げているお店が愛おしくもなってくる。

 

ここのお店は他にもメニューがどっさりとあって、いわゆる広島風も普通にメニューにあるが、広島風で頼むとそこまでの味ではなかったりする謎もある。あくまでも大阪スタイルを極めた店なのか。もちはもち屋ということなのか。他に頼むべきものが大量にあるのでどうでも良いといえばそうなのだが。それにしても店内は空いてるとはいえお持ち帰りの客がひっきりなしに来るのでさすがの人気といえた。

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ズラリと並んだメニューが頼もしい。鉄板で作る一般料理も多くて、正しいお好み焼き居酒屋のあり方である気がする。

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