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映画『かいじゅうたちのいるところ』は面白いから騙されたと思って観てほしい。

無料なのにいつもイカす映画を観せてくれるギャオ!に『かいじゅうたちのいるところ』が先日までラインナップに入っていた。公開前に劇場で予告編で観て以来、観たいと思ってた映画だ。

 
劇場で何度か観た予告編では、子供と、着ぐるみみたいな変なバランスの「かいじゅう」が、森の中を全力疾走したりジャンプしたりする映像が、ノリのいい音楽とともに流されるだけのもので、さっぱり内容を説明してなかった。子供向けの映画のようだけど、正直よくわからない。気になったのは、着ぐるみみたいな奴らが、やけにパワフルに飛んだり、走ったり、豪快に木を砕いたりしてたこと。子供向けのファンタジックな話にしては、映像に迫力がありすぎる気がした。絵本が原作みたいな雰囲気だけは伝わってきた。ああ、たしかに、このかいじゅうたちのおかしなバランスは、絵本の絵をそのまま立体化したようだ。でもそういうのが、リアルな生き物みたいに活動してると、なんだか怖い。これは本当に子供向けの映画なんだろうか?
 
まったく予備知識はないけれど、どんな映画なのか確かめてみたい。原作の本がどんなのかを知るより先に、映画館のスクリーンで体験をしてみたい。いってみれば、素晴らしくそそられる予告編だったように思う。本編を観た後に見返してもやっぱり良い。この映画の魅力が満載の疾走感のある予告編だ。よく出来た予告編はよく出来た本編と同じくらい価値がある。こちらのショートバージョンが最高である。僕が劇場で何度も観たのはこっちだった。
 
 
これだけ予告編でそそられたのに!なんということだ、なんとなく(本当になんとなくだ!!)公開中に行きそびれ、映画館では観ずに終わってしまったのだ。こうなってくると、DVDなどでは、なかなか観ないもんなのだ。人間って勝手なものだ。
 
それがギャオ!で無料で公開中となると敷居が低い。素晴らしいもんですね。さっそく観てみる。数年ごしの邂逅だ。観たら冒頭から引き込まれまくり。「こんな映画だったのか!」と感無量。ラストは感動で涙が抑えられんかった。この作品、とにかく前情報なしで観るのが一番おもしろい。といっても、ベストセラーの絵本だから、絵本版を知ってる人も多いのかもしれない。僕は映画を見てから絵本にあたってみた。あまりのシンプルさに驚いた。よくもまあ、こんな映画に仕立て上げたものだ。それでいて絵本のいろいろのディティールを感心するほど細かく再現してある。

 

かいじゅうたちのいるところ [DVD]

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ここから先はネタバレも含めて紹介していく。
 
冒頭からオオカミの着ぐるみを着て、飼い犬相手に狂ったように暴れてるガキ。なんなんだこれは。まったく理解ができないので画面から目が離せない。そして、彼は、お姉ちゃんに構ってもらいたそうにしてる。でもお姉ちゃんは男友達との話に忙しい。だからガキはお姉ちゃんの友達に雪玉を投げつけることにした。反撃されて雪で使ったお城も壊されてしまう。泣いてしまうマックス。そう、こいつの名前はマックスというらしい。あばれ者だけどしょせんは小さい子供だ。だけどその後は癇癪を起こして留守のお姉ちゃんの部屋に飛び込んで無茶苦茶に破壊する。お姉ちゃんに贈ったらしいハート型の工作もバラバラにする。でもちょっと後悔してみたり。
 
マックスはお母さんにも構って欲しい。母子家庭だからお母さんは仕事で忙しくてなかなか息子の相手は出来ない。だけどお母さんはマックスの想像力が豊かなところを愛している。お父さんがどうなったかわからない。マックスの部屋にはお父さんから贈られた地球儀がある。「世界の王マックスへ」というメッセージが書かれている。そばにはマックスが、トイレットペーパーの芯や枝やレゴで作った夢の街が飾ってある。そして紙で作った船も。
 
お母さんは構ってくれなくて、男友達とイチャイチャしている。マックスはオオカミのぬいぐるみを着て癇癪を起こしてしまう。怒ったお母さんに取り押さえられたので、つい噛み付いてしまう。「なんて手に負えない子なの!」と言われてしまう。
 
「僕、悪くないもん!」狼の着ぐるみのまま夜の街に逃げだすマックス。
 
いつしか彼は船に飛び乗って、大海原に漕ぎだす。そして雨の日も風の日も航海を続け、やがてある島に上陸する。それが「かいじゃうたちのいるところ」だった。
 
マックスは、口から出まかせを言って、かいじゅうたちの王様におさまる。マックスはキャロルというかいじゅうと意気投合する。キャロルはみんなの心がバラバラになることを怖れていて、こんな家に住んでたのが間違いだったと家を破壊してまわっている最中だった。彼はKWという女かいじゅうがどこかへ行ってしまうことを特におそれている。KWはボブとテリーという友達を外に作っていて、ともすればそっちの方に行ってしまう。キャロルにはそれが耐えられない。
 
キャロルはみんなが仲良く楽しく暮らせる街を夢想している。そんな理想の街を、枝の模型で作っていて、それはマックスの部屋にある紙コップの街をより精巧にしたデザインだった。キャロルはずっと俺たちの王様でいてくれよなとマックスに言う。マックスはみんなが楽しく暮らせるこんな砦を、実際に作ろうと提案する。かいじゅうたちは協力しあって、やがて巨大な砦を建設する。
 
だけど話は理想通りには進まない。新しい砦に、KWがボブとテリー(実はこいつらはフクロウだった)を連れてきたのがキャロルは気に入らない。ギクシャクした雰囲気が生まれてしまう。そこで王様のマックスが提案したのは泥団子合戦だった(なんでやねん!)。しかしみんなで泥団子を激しくぶつけ合った結果、キャロルとKWは喧嘩になってしまうし、みんなも怪我したりウンザリした様子(そらそうだ!)。そしてKWはまたみんなの元から離れていってしまう。「王様なんとかしてくれ!」とキャロルに請われるも、マックスには打開策は何もなかった。
 
「俺たちを守ってくれないひでえ王様だ!」何もしてくれないマックスに失望して荒れ狂うキャロル。実際問題マックスはしょせんただの8歳児。「ごめんなさい!」としか言えなかった。それでも癇癪を起こして砦を壊そうとするキャロルをなんとか止めようとする。そして興奮したあまり友達のかいじゅうの腕を引っこ抜いてしまったキャロルに「きみ、手に負えないよ!」と言ってしまう。「俺は悪く無い!」と激昂したキャロルは「喰ってやる!」とマックスを追いまわす始末。
 
あとでキャロルの隠れ家にいってみると、理想の街の模型はめちゃくちゃに破壊されていた。マックスはみんなが仲良く暮らす世界を作ることに失敗してしまったのだ!
 
自分はかいじゅうたちの王様じゃないし、いるべきところはここではないことをマックスは思いしる。かいじゅうたちは名残り惜しむが、船に乗って元の場所に帰ることにした。
 
で、マックスは、航海を経て、たちまち現世に戻ってくる。全力で走って家に帰ったら、母ちゃんが飯を用意して待っててくれていた。喜んで飯を食べるマックス。おしまい。
 
……
 
素晴らしい!説明とかくどくどと無くていきなり終わるのがよい!かいじゅうたちとの交流を経てマックスが立派に成長しましたとか、良い子になりましたとか、そんな演出をされたらこっちが困ってしまう。
 
映像と音楽が何より美しかった。手ブレ映像によるリアリティは、現実世界でも、かいじゅうたちのいるところでも変わらない。現実感のある画面に、きぐるみかいじゅうが走り回る様は、不思議な迫力がある。海辺と、砂漠と、岩しか無い島が、とても幻想的なものに見えてくる。よほどセンスとこだわりのある監督に違い無いと思ってあらためて調べたら、スパイク・ジョーンズ監督の作品だった。あの『マルコビッチの穴』の監督だ。なるほど、合点もいく。
 
まず、かいじゅうたちの表情に注目してしまう。メインになるかいじゅうキャロルの哀愁に満ちた表情。垂れ下がった目尻。観てるだけで胸が締め付けられるような気持ちになる。なんという悲しい顔をしてるんだ。主人公のマックスならずとも、わけもなく同情したくなる。日本語吹き替えの声をあててるのは高橋克実。乱暴者なおっさんボイスがしっくりくる。哀しい中年男性をデフォルメしたかいじゅうだ。オリジナルの声は『ザ・ソプラノス哀愁のマフィア』の主演の大柄のおっさん。まさに哀愁。でも僕的には吹き替えの声の方が雰囲気はあったな。
 
他のかいじゅうたちも、鳥だったり牛だったり、原作の絵に準拠した、とても個性的な姿形をしてるが、みな一様に悲しそうな目をしてるところが胸に刺さる。着ぐるみなんだけれど、顔はCG処理されてるらしく、口元なんかの動物っぽさはかなり完璧なものがある。動物に対してどこかしら哀愁を感じずにはいられない人っていると思うが、そういう人がグッとくるビジュアルを作っていた。
 
物語のキーになるKWなんかは、女性の顔をアンバランスに巨大化したような、たいそう不気味な姿をしている。漫画の『進撃の巨人』のモデルになったのではなきだろうか。主人公の少年マックスを丸呑みするシーンがあるのだが、あれなんかもそのまま漫画の参考にしてるにちがいない。
 
かいじゅうたちがしっかり怪獣してるところも魅力ではないか。この物語に出てくるかいじゅうたちは、となりのトトロみたいな気のいい連中ではない。なんかあるとマックスを食べようとするし、どいつとこいつも性格問題児だし、それでいて木や石をいともたやすく砕いてしまうようなものすごいパワーを持ってたりする。いつ、マックスが、プチっと潰されるんじゃないかと、気が気でない。ダメな子ども向け映画特有の、「どうせ大したことにならないんでしょ」という弛緩した空気が微塵もない。泥団子合戦のシーンなんか、かいじゅうたちにパワーがありすぎて、泥団子が迫撃砲のように炸裂しまくる。これじゃ本当の戦争だ!
 
映画を見てればだいたい察しはつくが、「かいじゅうたちのいるところ」とは、つまりマックスの創造した虚構の世界だ。虚構の世界では誰だって王様になれる。マックスが入れ込むキャロルは、マックスの分身であり、父親のイメージも投影されている。すぐどこかへ行ってしまうKWは母親であり姉である。その他のかいじゅうたちも、マックスが創造したものであるから、マックスがわからない事は彼らにもわからない。KWに勧められてボブとテリーというフクロウにアドバイスを貰いに行くが、彼らの言葉はマックスとキャロルにはさっぱり理解ができない。わかっているらしいKWも、内容を教えてはくれない。そりゃそうだ。自分が知らない回答だもの。キャロルが抱えている不安は、マックスの不安でもある。キャロルを導くことは、自問自答するのと同じことだったりする。
 
なぜKWが出て行ってしまう?なぜ仲間がバラバラになる?
家の形が悪いのか?じゃあ全部ぶっ壊して理想の砦を築こう!
またKWが出て行った!なんでだ!砦が悪いのか!?
 
やがて考えが堂々巡りになってくる。これ以上はどうやっても物語が展開しないところまで来てしまう。自分自身の気持ちを「面倒くせえ」と思ってしまうのだ。キャロルが「俺は悪くない!」と荒れ狂うのも無理はない。そのあと何もかも放り投げて、無茶苦茶の有耶無耶にすることも出来ただろうけど、マックスってやつは意外にたいしたやつで、8歳児のくせに土壇場で冷静さを取り戻す(まあ、映画だし)。母親ともいえるKWの胎内に隠れている間に、落ち着きを取り戻すシーンは象徴的だ。
 
マックスはみんなが仲良く暮らす世界の創造に失敗したことを素直に認める。王様というのは嘘で、自分は単なるマックスだとキャロルに告白する。そして家に帰ることを決意する。キャロルが破壊した模型のそばに、ハートで囲んだCのサインを残して。それはまさしく、冒頭で破壊した、お姉ちゃんへのプレゼントの工作と同じものだ。自分の気持ちに寄り添うことが出来たのに違いない。キャロルってかいじゅうは、マックスの寂しい気持ちや駄々っ子なところが投影されて創られた存在だ。だから寄り添う気持ちは瞬間的にキャロルにも通じるし彼は感極まって泣き始める。そして船に乗り込むマックスを見送りに浜辺にやってくる。この時の表情がたまらない。水木しげるのマンガみたいなくしゃくしゃの顔になる。普段から哀しい顔なのにその100倍くらいだ。ここで貰い泣きする。
 
マックスがかいじゅうたちを島に置いて家に帰る展開に、収拾つかなくなった物語を投げ捨てて逃げるみたいな非情なイメージをもたれる方もいるかもしれないけど、逃げるもなにも「かいじゅうたちのいるところ」がマックスの心の中にあるとすればそれは不可分な存在だ。
 
今までなにも喋らなかった牛のかいじゅう(原作絵本の表紙のやつ!)が最後に言う。
 
「僕たちのこと良い奴だったとみんなに言ってよね」
 
吹き替えだと八奈見乗児の声なのでタイムボカンとかの世代だと余計に郷愁を誘われるのだけど、投げ捨てる世界のキャラクターにこんな台詞は吐かせないわけで。かいじゅうたちがマックスの想いの断片とすると、「みんな良いやつだった」ってのはつまりそういうことだ。なんだかんだあっても、虚構の世界に救われることもあるということではないのか。
 
以上、考察も交えつつ解説したが、本来はガチガチに解釈するのは野暮に違いない。どこまでいっても曖昧な点のたくさんある映画なので、自分なりの解釈の余地がたくさんある。あんまり説明ぽくないのが有難い。けど、ワーナーブラザーズは、わかりにくい内容を嫌って、監督に撮影のやり直しを指示した。絵本の原作者のモーリス・センダックが猛烈に反対したので、そのままの形で公開されることになった。センダックは映画の製作者に名を連ねている。
 
原作の絵本はひたすら単純なストーリーだし、わからないことだらけである。そういった原作の持ち味を残しつつ、よくぞ長編映画のボリュームに膨らませたというべきか。センダックも、スパイク・ジョーンズ監督の解釈は、彼の独自のものと説明しつつも、原作の魅力を損なってはいないと最大限の賛辞を送っている。
 
原作の絵本は、世界的なベストセラーだけど、最初は「なんだこれ!意味わからん!クソガキが主人公だし教育に悪い!」と大人たちを激怒させたそうだ。この作品についても、観た人の何人かは同じように怒るらしいから、やっぱり映画化としては大成功してるのだと思う。
 
意味わからん映画としてまずは気楽に観てほしい。

 

かいじゅうたちのいるところ

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