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川田利明『開業から3年以内に8割が潰れるラーメン屋を失敗を重ねながら10年も続けてきたプロレスラーが伝える「してはいけない」逆説ビジネス学』を僕が読んだ理由!?

全日本のプロレスラーだった川田利明の書いた本を読んだ。けっこう話題になっている一冊だ。

僕自身は猪木や馬場がよく動けていた頃、タイガーマスクなんかいた時代の新日や全日を子供の頃に見てた世代だけど、川田利明という選手自体には思い入れは何も無い。試合を見た記憶もない。「なんかそういう選手おるよな」くらいのもんで。

 

じゃあ何で本を買ったのかというと、純粋にビジネス読み物として面白そうだったから。この本の内容ともかなり重複しているが、川田氏のラーメン屋の苦労話のネット記事が抜群だったのもある。(本のプロモーションを兼ねた記事だったのだと思う)

本を買ってまで読みたくないという人も、この一連の記事を読むだけで半分以上は内容を把握できると思う。とにかく飲食店のキツさ、それもラーメン屋を経営していくキツさを綴った本なのだ。僕も飲食業やサービス系の仕事や経営に関わる事が多い人生なので、「うんうん、わかるわかる」と頷いてしまう意見が多い。

 

「ラーメン屋だけはやるな!」というかなりの部分で正直な気持ちをこめた内容だと思うし、そんな川田利明という人の事が気になってしまったのもあって、発売されたばかりの本を注文してしまった。発売日からわりとすぐ注文したけどもう2刷になっていた。かなりの注目度だったのがわかる。大半はプロレスファンだろうけど、僕みたいな奴も買っているので、記事として普通に読ませる内容だったのだろう。

 

とにかく「ラーメン屋を始めようというバカを止める」という姿勢に貫かれているのが面白いし、ラーメン屋にまつわる厳しい話に終始しているのがかえって興味深い。そして自分の店もぜんぜん儲かってなくて赤字は拡大。店が10年続いている事だけが成果だという立場からモノを言っているのが凄い。こんなビジネス話はあっただろうか。

 

 俺もさまざまなデータを取り寄せたけど、ある調査によると一年で新規オープンするラーメン屋はだいたい3000軒だという。毎日10軒近いペースで、日本のどこかでラーメン屋が新たに暖簾を掲げていることになるが、恐ろしいことに閉店していく店も、やはり約3000軒になるのだという

 

一番好きなところを引用させてもらったが終始こんな調子。ラーメン屋はまず潰れる。普通は3年で潰れるところが、10年続いた俺はそこそこ偉いとかではなくて、むしろ潰していた方が赤字を拡大せずに済んだから賢かったとまで言い切る。一種のハードボイルド小説として読んでも面白い本だったりする。たしかに、満身創痍のプロレスラーが、儲からないラーメン屋を開業して、愚直なまでに料理を作り続ける姿は、ハードボイルドとしか言いようがなかった。風間一輝先生とか、レイモンド・チャンドラーとかが好きな人は読んでも良いかもしれない。

 

川田利明というプロレスラーのことを知らなかった人間でも、プロレス時代の内側も含めてざっと説明してくれているので、そういう面でも誰でもが読みやすい内容になっている。これ一冊読めば川田利明というキャラクターがびんびん伝わってくる。なぜ彼がプロレスを目指し成功して、なぜそんなプロレスを辞して、次はラーメン屋になろうとしたのか、その流れが無理なく理解できるようになっている。

 

正式にプロレスラーを引退したわけじゃないが、満足できる試合が出来ないならリングに上がる気はないと。そして今はラーメン屋が本業で、満足できる料理しか出したくないと言い切る川田利明。リングでも料理でもひたすら真面目なキャラクターは、やはりハードボイルドの主人公として成立している。すくなくとも本書の中においては読者の感情移入度は半端ない。そしてたしかに構成的には小説として完成されている。編集した人の力量はたいしたものだと思った。

 

本書が面白いのは、単なる小説と違って、リアルタイムで進行中の出来事を書いていることだ。だから本の中の川田利明のキャラに感銘を受けたとしたら、すぐさま彼の店「麺じゃらすK」に足を運んで、実際のところを確かめてみることが可能。僕はものすごく彼のラーメンや唐揚げが食べたくなってしまった。リアル聖地巡りというやつか。これを最後まで読んでしまったら、ほとんどの人は食べに行きたくなるんじゃないだろうか。

 

あと心に残る教えとして「飲食店の立ち上げ時にしでかしたオペレーションの不手際は10年経っても引きずってしまう」というものがあった。店を始めたころはたいていの人は素人。しかしお客さんはそんなことは大目に見てくれない。そこで「不慣れな店だね」「味がまだまだだね」と言われた評価は、ずっと後になってそれらが改善されたとしてもそのまま。たしかにその通りである。

 

実際に彼の店の食べログレビューには、何年も前に書かれた「不慣れな店です」とか「発展途上の味です」みたいな事を書かれたのがそのまま残っている!しかもけっこうな上位に表示され続けているという恐怖!川田利明の記事を読んだ後に、食べログレビューを見て「やっぱりそうなんかな?」とか、僕ですら少し思ってしまった事実がある。そういうのを身をもって証明しているのが凄い。中身のある本だ。

 

本の中にも「バイトは金がかかるから雇わない」「何から何まで独りでやることにこだわる」「券売機が頼りになるパートナー」みたいな事がたくさん書いてあるので、ハードボイルドなオヤジがひたすら独りでやってるラーメン屋という印象を受けてしまうが、実際のお店はホール係の奥さんと二人三脚でやっているらしい。そのへんボカして書いているのは夫婦の話にするとテーマがブレちゃうからだろうか。なんにせよ店に足を運んでみれば真実のところがわかるわけだし、どうでも良いっちゃ良いけれど。とにかく店に行きたくなってるのは間違いない。

 

店に行くハードルとして、東京まで行かねばならないのは当然として、駅からやたら遠いというのがある。これが川田利明のラーメン屋が商売にとって不利になっている最大の理由にして、なおかつ最強の理由なのも重要なポイントだ。なにしろ、うっかりそんなところに店を借りてしまったというワンミスが、その後のすべての苦労の元凶になっていて、それを分かっていながらにしてどこにも逃げれない理由だったりするのが本書で明らかになる。商売は恐ろしいのだ。そういうストーリィも踏まえると、駅から10分以上歩いていくらしい道程にもいちいち味わいが出そうな気がする。まだ行った事ないけれど。

 

あと、タレント本にありがちな、字が大きくて分量もそんなに無いという本なので、老眼の人にも優しいのでオススメしやすい。非常にテンポよく読んでいける。あんまり本を読まないという人も安心して欲しい。

 電書版とかは今は出てない。

川田利明

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