義経で年明けうどんをキメた僕だったが、実は密かな野望があって、ここのビルの二階で営業してるらしい『木蘭(ムーラン)』という店が営業しているなら行ってみたかったのだった。
木蘭(ムーラン)の場所を確認にきた副産物として、1fの義経に興味を持っただけだ。義経には失礼だったかもしれないが、他人に推せる凄いうどん店だったのは間違いはない。
さて木蘭(ムーラン)だが、聞くところによると大将が老齢で弱っており不定期営業になっているみたいな事を聞いた。閉店してないのが奇跡の存在だと。そうするとお正月3日なんかまずやってないのではないかと。しかし2Fの方に目をやってみると、電気がついてるし開店作業をやっている気配があるのだ!
ダメ元でも来てみるもんだなあと思いつつも、義経でうどんを堪能したあとも暖簾は出ていない。準備中の札が出てるので営業するのは間違いなさそうだが…。看板も出さず必死にやってるお店に対して「何時からですか?」とせっつくのも嫌だったので、ぶらっと一周してくることにした。義経では天ぷらうどん小にしといたのでまだ腹に余裕はある。というか物足りない。
かつては香川にうどん遠征に来た時は、5軒も6軒も店を回ったもんである。最大で10玉とか食ってたと思う。しかしさすがにそれをすると途中から楽しくなくなる。うどんを食うのが義務みたいになるどころじゃない。7玉くらいを超えるあたりから、白いものを見るだけで呪いたくなる。美味しいうどんを食べに来たはずなのに…。
たしかに初めて香川にやってきたとかなら、一軒でも回りたいという気持ちもあるし、それでも良いと思うけど、さすがに年に何回も行くようになってからは3軒くらいが限度かなと思っている。本当のところは1軒が良い。きちんと1軒の店と向き合いたいというか。メニューもいろいろあるし、「次の店のことを考えて小」とかはなるべくやりたくない。義経でやってしまっているが。とはいえ、どうしたって3軒くらいは行ってしまう事が多いのも確か。だってそこにうどんがあるから…。
この日も木蘭(ムーラン)が開店するまでヒマだなと歩いていたら、足が勝手に植田うどんまで戻ってきてしまってた。そこにうどんがあるなら食べたいのがうどん人(びと)だ。
植田うどんというのは人気店なんだが、昼前は空いてるのも確かなのだ。11時30分あたりから急激に混み始める。この時間帯は悠々と楽しめる。そして植田うどんの特徴として天ぷらのバリエーションの豊富さとクオリティが挙げられる。ラインナップの変化が楽しい。この日は穴子の一本揚げ120円と、ごぼうの天ぷら120円が強烈な輝きをはなっていた。穴子は素晴らしい安さだし、ごぼう天はかき揚げのように丸くまとめたタイプで角が立ちまくり。あまり見た事がないので興奮して取ってしまった。もちろん穴子も。
れんこんもキラキラしていたがグッと堪える。
讃岐うどん屋の作法としておにぎりやおでんもある。しかしここであまりおでんやおにぎりを食べた記憶がない。これが「1日で何軒も回りたい」弊害よなあ…と思う。改めていきたいもんだ。植田うどんで、うどん大を頼み、おにぎりやおでんで豪遊。もしくは麺処綿谷で特大うどんと天ぷら取りまくりとか(特大だけで死ねる)。それを実行した時が、讃岐うどん人として「成った」時なのだろう。
この日はまたしても「ぶっかけうどん…冷たいやつ…小で…」と忌まわしい注文をしてしまった。まだまだである。
それはそれとして素晴らしい天ぷら。食べる前からわかるサクサクさ。僕を含めて店内客はうどんを茹でるので時間をくれと言われていた。なんと揚げたて!植田うどんの釜から揚げたては相当美味い。新年から縁起がよい。天ぷらをにらみながら待つ。
やがて渡されたうどんもキラキラと輝いていた。うどんと天ぷらを交互に食べる。たまらない幸福感。これだったら中とかにしたかった。いやいや、そんな事をすると、このあとの木蘭(ムーラン)が控えているし…。これがダメなのだ。
ごぼう天ぷらは下手に食べると、口の中がズタズタになりそうなくらいソリッドで最高だった。最後の方は、汁に浸しつつ食べて二度美味しい。結局この日、なんだかんだで、”うどんは”2軒にとどめておいた。かなり平常心を保っているといえるたろう。それにしたってピーク時前の植田うどんは推せるうどん屋だ。あんまり早く来すぎると天ぷらの並びが寂しいこともあるけど…。