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ピエール瀧のコカイン事件における過去作品のリリース停止や改ざんの是非を問う!!

ピエール瀧がコカインをやったというニュースでもちきりだ。

 

その影響でピエール瀧の出演している番組、ゲーム、音楽ソフトなど、ありとあらゆるものの制作や販売が停止してしまった。電気グルーヴのCDが回収されるだけでなく、石野卓球のイベント出演まで中止されるというから驚きだ。

 

僕自身は電気グルーヴのアルバムのうち初期のやつを3枚くらい持ってるだけだし、あとは人生のアルバムを数枚買っていた。もう二十年くらい昔の話になるのだろうか。だからあまりファンでもないし強い思い入れはない。

 

ピエール瀧については漫☆画太郎と組んだ『虐殺!!!ハートフルカンパニー』と、現時点での漫☆画太郎の一番の長編である『樹海少年ZOO1』の原作者としての馴染みしかない。これらは大変に好きな作品だった。あとは『アナと雪の女王』シリーズの雪だるまオラフ役も気に入っていたので、降板になってしまったのは残念に思っている。

 

今回の回収・発売中止騒動に巻き込まれて、漫☆画太郎先生の漫画も!?と思ってamazonに見に行ったら、『虐殺!!!ハートフルカンパニー』は普通に売っていて安心した。『樹海少年ZOO1』はマーケットプレイスにしか無いが、もともと絶版だったのでこれはしょうがない。いまのところプレミアとかついてないので、読んでない人は読んで欲しい。相当おもしろいから。

虐殺!!! ハートフルカンパニー

虐殺!!! ハートフルカンパニー

 

 

さて、ピエール瀧逮捕によって、作品が回収されたりリリースが停止されたりする問題については、ファンや関係各位のあいだで相当に紛糾している。「そんなことする意味あるのか。異常すぎるだろう」と。坂本龍一も以下のようなツイッターをしてニュースになっていた。

坂本龍一は 「音楽に罪はない」としているが、 じゃあ「ピエール瀧自身には罪はあるのだろうか?」というところから検証が必要じゃないだろうか。

 

「なにをバカな、ドラッグをやって警察に逮捕されて本人も認めているのだから確実に罪があるだろう」と考える人は、国家が制定した法律を違反することと、倫理的な罪を混同している恐れがある。

 

どうもこの案件は、単純な問題にみえて、実際はさまざまな争点が入り混じっており、皆が考えているよりも相当に複雑な話かもしれない。どんな話題であれ、争点が入り乱れないケースはなかなかない。みんな同じ話をしてるつもりになっていて、その実は全然違う話をしまくっているなんてことはよくある。それを踏まえない人たちが、てんでバラバラに議論しても、余計に話がこんがらがっていくだけだ。とりあえず主な争点として挙がっているものを思いつくままに列挙してみる。自分がどの話題に興味があるのかを考えてみて欲しい。

 

1.人と作品は切り離して考えるべきか否か。

2.コカイン使用者は加害者なのか。

3.コカイン使用者を商用利用する倫理的な是非。

4.犯罪の商用利用に対する倫理的な是非。

5.過去作品にたいして改ざん権を権利者が独占する問題。

6.配信販売に対する責任。

 

他にもあるかもしれないが、僕が思いつく範囲はだいたいこれくらい。今回はこれらに争点についてひとつひとつ検証していきたい。

 

1.人と作品は切り離して考えるべきか否か。

これはもうしょっちゅう議論されているネタだろう。個人的には、製作者と作品を切り離しての評価なんてのは不可能だと考えてはいる。だって殺人鬼が主役の小説があったとして、作者が本当に人を殺していた人だったと知ってしまった後に、知る前と全く同じ評価になると堂々と答えられる自信はないし、同じになるとは答えたくはない。というか、作者の情報を知れば知るほどに、作品への理解というのが変化していくのは当然だろうと考えている。作品それ自体(世に「テキスト」と表現されるもの)に込められた情報量というのは、みんなが思っているほど多くはないのだ。

 

もちろん、そうじゃない「テキストはテキストでしかないんだ」という人も、世の中には存在することも知っている。そういう人にとっては、「人と作品は別」と言い切れてしまえるのだろう。僕とは違う感覚だが、それはそれで構わないと思う。ホットドッグが至高の料理と考えている人に、そんなもの美味いと考えている奴は馬鹿だとか罵るみたいな意味のないことはしたくない。

 

重要なのは「切り離して考えれない人」と「切り離して考えられる人」が、それぞれ何人かはいて、世界にはそういった違う人たちが確かに存在しているらしいという現実だ。

 

お互いを尊重しようという立場から考えると、「その作品を閲覧するかどうかは個人の判断に任せるべきでは?」という結論に至る。つまりそれがアドルフ・ヒトラーの『わが闘争』であれ何であれ、歴史から完全に抹消するという事は許されないのではないかという事だ。(ただし『わが闘争』は、彼の犯罪に直接関わるメッセージ性が強いものなので取扱い危険物だが)

 

というか、そもそもとして、ピエール瀧がコカインやってる事実によって、彼の関わった作品への評価が変わったとして、それを封印しましょうという話とどう繋がるのか全くわからないのだけど。作品がつまらなくなったり、楽しくなったり、変わらなかったりするだけじゃないの。

 

結論としては、作品と人とは別であれ、別じゃないであれ、ピエール瀧の作品封印問題にはぜんぜん関係のない議論っぽい。今回の件に関しては、これについて話すのは完全に無駄!長々と書いて損をした!(個人的にこだわりのあるネタだったので)

 

2.コカイン使用者は加害者なのか。

これも盛んに議論されている。

 

最初にも述べたように、まず問わなければいけないのは、禁止薬物を使用するのが、はたして悪行なのかということ。殺人事件や、レイプ事件や、窃盗事件などのように、ピエール瀧が禁止薬物を摂取することで被害者が出たのだろうか。

 

ピエール瀧がコカインをキメて車で誰かを轢き殺したとか、誰かを思いっきりドツイたみたいな行為は報告されていない。一人で気持ちよくなっていただけやんと。それがたまたま法律で禁止されていたから逮捕された。ルールには違反したが、人道に違反したとは言い難い。抵抗して暴れたとかも無い。

 

そういう意味では、スピード違反とか駐車違反で捕まったみたいなことに等しい。むしろスピード違反や駐車違反の方が、迷惑をかける度合いや危険度でいえばもう少し悪いのかもしれない。

 

ピエール瀧って特に誰にも迷惑かけてないんじゃあ?」と思うのが正直なところ。迷惑がかかったとしたら、逮捕されることで穴を開けた仕事とか、販売を自粛することで損害を与えたりしたことだろうか。前者はまあ完全に悪いとしても、後者に関しては「じゃあ自粛するのをやめたら?」という反論も可能だ。

 

「違法薬物を買い求めたり、それを摂取したりする人なんか嫌い!」という意見は尊重されて良いと思うし「そんなピエール瀧とは仕事をしたくない」と思ったならそれはそれでひとつの判断だ。ディズニーが、ピエール瀧をアナ雪のキャスティングから下ろすと判断したのも残念だけどしゃあない。過去の吹替を封印するかどうか問題は後で述べる。

 

コカインは常習性があり、販売を禁止されている薬物だ。そんなものを法律を破ってまで販売した人間は確実に悪辣(アルコールやニコチンや砂糖やカフェインなどはどうなのという議論はひとまず置いておく)。

 

とすれば薬物使用者は、違法薬物ビジネスの被害者という見方も出来る。というか、むしろ被害者であるという見方が近年は支配的である。アルコール依存症と同じように病気であると。病人に懲罰を与えるのはナンセンスであり、薬物依存から脱却する支援すべし!ということである。そういう近年の価値観を照らし合わせてみれば、ピエール瀧の行為を悪行として断罪してしまうのは、相当にムリがありそうでもある。

 

ピエール瀧は薬物被害者ではあっても、何かの加害者とはとうてい言えない。社会通念上は、薬物依存の哀れな人でしかないのではないだろうか。もちろんそのイメージで仕事を断るのは自由だとは思うが、過去作品を封印しなきゃ薬物被害者が増えるとかいう話にまで飛躍するとついていけなくなる。

 

3.コカイン使用者を商用利用する倫理的な是非。

つまり、ピエール瀧がコカインを使用するという法律違反を犯して新聞沙汰になったことで得たネームバリューを利用して商売の売上につなげてしまうのは、倫理的にいかがなものかという観点。

 

たしかにそう考えると、コカイン使用で警察沙汰なんてのは、皆が忌み嫌いつつもその魅力に抗しきれないとされる、いわゆる「炎上ビジネス」に近い行為という見方も可能かもしれない。

 

ならばそんな倫理的にスレスレである「炎上ビジネス的な行為」は企業イメージにそぐわないとする理屈も成立するかと考えた。だとすれば販売自粛表明もそれなりに納得がいく対処にも思えてくる。

 

もっとも、ピエール瀧の過去作品の販売停止なりを、以上のような先進的すぎる観点から停止したと公言している企業は僕の知る限りは存在しない。いずれにせよ、こういう理由だったとしても、話題の旬というものはあるわけで、恒久的な作品封印はありえない気がする。

 

4.犯罪の商用利用に対する倫理的な是非。

これも3番めの理由に準ずる観点。酒鬼薔薇聖斗事件の犯人が幻冬舎から本を出版して大儲けしたことについて批判の声があがったが、ああいうのは倫理的にどうなのかということ。犯罪をネタに儲けるのは被害者感情も逆なでる行為だ。アメリカには、そうした行為によって利益を上げた場合は、没収されるという法律すらある。

サムの息子法 - Wikipedia

 

しかし何度もいうが、コカイン使用には被害者はいない。むしろ自分が被害者かもしれない。あと、炎上ビジネス狙いでコカインをやって捕まったわけでもないし、コカイン使用をネタに音楽を作ったり芝居をしたという事実も無い。むしろ仕事を干されてしまっている。

 

だからこの観点でもピエール瀧を批判する意味はなさそうだ。

 

5.過去作品にたいしての改ざん権を権利者が独占する問題。

販売権利者だからといって、気分によって過去の作品を封印することによって、大衆の見る権利を奪うことは許されるのかということ。

 

スター・ウォーズ』ファンの間で盛んに言われている事を思い出す。知らない人のために説明すると、初代の『スター・ウォーズ』三部作は、ジョージ・ルーカス監督の手でたびたびアップデートを加えられていて、昔あったシーンがCG処理で別のものに変えられたりして、当初の映画とは別物になっていっていたのだ。

 

スター・ウォーズ/ジェダイの復讐』でダース・ベイダーの正体を演じていた俳優さんなどは、後のシリーズでベイダー役を演じたヘイデン・クリステンセンに差し替えられて抹消されてしまった。権利者の一方的な都合によって歴史が改ざんされてしまったのだ。ピエール瀧が出ているのが嫌だから消しましょうなんてのは、まさにこれと変わらない行為だ。

 

もともとの映画に思い入れのあるファンたちは「俺たちが好きだった映画を返せ!」と1997年の最初のアップデート版である『スター・ウォーズ特別編』の上映以降ずっと主張を繰り返していた。なにせこれ以降はスター・ウォーズのソフトは特別編を基準にしており、オリジナル版は無かったものとして、ソフトの販売や制作を停止してしまっていたのだ。ずっとファンの声を無視し続けてきたジョージ・ルーカス側ではあるが、近年になってようやく限定版という形でDVDやBlue-rayを販売したという経緯がある。消されたダース・ベイダー役の人も十数年ぶりに復活できたわけだ。

 

また、人類社会に残る膨大な作品群は、後に犯罪者として起訴された人間や、薬物使用者やレイプ犯やその他いろいろの犯罪者が関わっていたりする。しかしその当時、犯罪など予期しなかった時期に発表されたものについて、後から封印するなんてことは許されるのだろうか。

 

たとば、O.J.シンプソン(94年に殺人罪で起訴、07年に強盗罪で有罪)の出演する『タワーリング・インフェルノ』や『カプリコン・1』などは今でも自由に鑑賞できる。また、ロマン・ポランスキー監督(77年に未成年に対する強姦で有罪)の『ローズマリーの赤ちゃん』『チャイナタウン』だって普通に観れる。コカイン使用した俳優が出演する作品が自由に観れる状態というのは、世間的にそんなに悪影響なことなのだろうか。その理屈はさすがにムリがありそうだ。

 

一定期間は売りたくないというのがあったとてしても、恣意的な理由で永遠に封印するのは、文化に対する責任としてもやってはいけないと思われる。そもそも、ピエール瀧が関わっている作品群というのは、ピエール瀧の単独の仕事というのは極めて少ない。まるでピエール瀧が作品のすべてと言わんばかりの対応は、他のスタッフやキャストや演者などに対してあまりにも配慮に欠けるのでは。「文句はピエール瀧にどうぞ」と言われても納得する人は少ないだろう。

 

6.配信販売に対する責任。

いかにも現代的な争点。

 

今回の話でいえば、ピエール瀧をモデルにしたキャラクターが登場するセガのゲームが配信停止になったが、後にピエール瀧のモデルを別のデータに差し替えて配信を再開するとしよう。その場合、前述した通りの過去作品の改変の問題のみならず、もともとのデータを購入したユーザーも、ダウンロードし直した場合にはピエール瀧が削除されたゲームしか遊べないということも起こり得る。もしかしたら強制アップデートという方法まで行われる可能性すらある。

 

以上については何も確定されたことではないので、現時点では憶測でしかないが、それを危惧してディスク版の確保に走った人が多数いたせいで、中古価格が高騰するという一幕があったくらい。ちなみに、ディズニーのゲームに登場したアナ雪のオラフについては、アップデートで別の声に差し替えられることが決定しているようだ。

 

それとは別に、今流行りのサブスクリプションサービスについての問題点も浮き彫りになっていた。月額料金を支払ってラインナップの音楽などを自由に楽しめるという類のサービスから、電気グルーヴの曲が次々と削除されてしまうという事態が起きた。「電気グルーヴも聞けるから」という理由で加入していた顧客に対しての裏切り行為ではないかというのだ。

 

そりゃいずれにおいても顧客との契約上の法律問題はクリアしてるのかもしれんが、不信感を招くには十分な行為といえる。ただこれにしても、作品封印が妥当とかいう話ではなくて、サブスクリプションとか配信ビジネスに対する問題点の話だから、混ぜて考えると非常に問題がある。「Kindleの本は果たして所有しているの?」問題とかで話した方が良さそうなネタ。

 

 

以上のように6つの視点から考察してきたが、ピエール瀧の関連作品が恒久的に封印されるに足る理屈はどこにも無さそうだ。百歩譲るとしてもペナルティとして一時的な販売自粛がせいぜいだろう。あと、これからの付き合いに関しては、それぞれが考えれば良いことだ。芸能界がピエール瀧を締め出すことで合意したというなら仕方がない。しかし作品の歴史は変えられないし、コカイン使用が悪行であるという理屈は成立しないことは何度も申し上げておく。どこをどう考えても「ルールを破っただけ」の話。法的な罰則は受けるだろうが、社会的制裁を受けるようないわれはない。

 

スピード違反でも未成年時の飲酒・喫煙でもなんでも、一度も法律を破った事の無い人だけが(もちろん捕まってなくてもアウトだ)ピエール瀧に石を投げたら良いんじゃないだろうか。胸を張って「俺は一度も違反してない!」なんて人が本当に出てきたらキモいけど…。

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