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ヤッホー茶漬けを体験せずして金沢の片町の夜はない。

この話の続き。焼き鳥屋を出て金沢の片町をふらつく。数年ぶりの片町。歩けば面白そうな店ばかり。どういうことだろうか。こんな素敵な街だったっけ。前に来た時はめくらだったのか。それか日曜日か何かだったのか。覚えてないので何ともいえない。めくらだった説が根強い。餃子の王将片町店に目を奪われていたのかも。

 

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たとえばこことか、前を通りかかっただけだが実に興味深いお店だ。お腹に余裕さえあれば間違いなく入ってた。次こそはカレーを食べるのはやめておこうと思う。となりのジャンボ庵とかいう、そばとうどんと丼の店もなかなか良い雰囲気。

 

次は連泊とかして散策しまくりたいと思った。

 

そんな中、自分には目当ての店があって、それは通称「ヤッホー茶漬け」と言われる店。片町になんか面白い店でもないかなとスマホで適当に検索していたら、金沢の面白スポット10選みたいなサイトがあって、そこに「奇人たちの店」として紹介されていたので激しく気になったのだ。

 

ちなみに「金沢 片町 老舗」みたいな単語でググった結果だったと記憶はしているんだが、あとでそのワードで検索し直しても、そのサイトは出てこないのだ。なんだったのか。その代わりヤッホー茶漬けを紹介しているページはいくらでも出てくる。

 

ヤッホー茶漬けは、正式には「志な野」という店名のお店だ。オープンがなんと22時30分とか、そういう無茶苦茶な時間帯。

 

なんでヤッホー茶漬けと言われるかというと、老舗のお茶漬け屋なのだが、店主がある時から「ヤッホー」以外の言葉を話さなくなった事に由来する。そして客の方も、お茶漬けを注文する時は「ヤッホー」と言わなくてはならない。注文するときも、代金を支払うときもヤッホーだけ。店内で使える言葉はヤッホーのみという狂った説明がなされていた。

 

そんなお店が本当にあるの?

 

興味が尽きない。こんなおかしな話が金沢にあったとは。行ってみなくてはならないと思い22時を回ったところから、店のあるらしい場所へと向かってみた。お店があるのは、繁華街から少しだけはずれた民家の立ち並ぶエリア。たしかにこの時間から明るくなっている一角があった。

 

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佇まいとしては何のドラマ性も感じられない。むしろものすごく地味な店に見える。こんな場所で狂気のやり取りが展開されているなんて思えない。

 

入り口が半開きみたいになっていたので、おそるおそる店内を覗き込んでみる。そしたら23時前だというのに中のカウンターはお客さんでぎっしりだった。ここまでなら単なる人気のあるラーメン屋と何ら変わらない。お茶漬け店というのがちょっと変かなと思うだけ。しかし異様な空気を感じる。何かが普通と違っていた。

 

「ヤホッー」「ヤッホー」「ヤッホー」

 

情報は本当だった。ぎっしりカウンターに腰掛けている客は、男も女も老いも若きも「ヤッホー」しか言っていない。店内から「ヤッホー」がこだましている。

 

しかしあまりに異様さに、思わず店の入口から退去して50メートルくらい逃げてしまった僕。

 

今観た光景は幻?夢でもみてたんじゃないかと思ってしまった。深夜に近付こうという時間帯に、ヤッホーしか言わないおっさんたちがカウンターにひしめいてお茶漬け食っている店。そんなもんが実在すると言って誰が納得するだろうか。しかも金沢で。僕なら「そんなばかな」と思ってしまう。でも今、ちょっぴりだが体験してしまった。超スピードとか催眠術とかいったチャチな代物ではなかった。

 

深呼吸をするなどして、心の整理をして、再び店の前に戻ってみる。

 

やはり、店内のカウンターはほぼ満席で、みんなヤホヤホ言っていた。二回目だから「覚悟」が出来ているので、少しだけ冷静にカウンターを見ると、詰めれば僕ひとりくらいは座れそうだ。

 

しばらくカウンターを凝視していると、おばちゃんが現れて、お客さんに荷物をどけるように言ってくれた。ヤッホーしか喋れないと聞いていたが、日本語も通じる人もいるのかと安心する。

 

店のオヤジは奥にいて「ヤホ!」「ヤホ」とか言っていた。客も負けじっと「ヤッホー」「ヤホ」とお茶碗を差し出す。するとお代わりが貰える。お代わりが欲しい時は、「ヤッホー」と言いながら茶碗を差し出せば良いらしい。少しだけヤホ語を理解してきたので余裕が生まれつつある。

 

座っていると、「ヤホ!」の掛け声と共にやかんが運ばれてきた。どうやら、お茶漬けの「だし」が入っているようだ。自分で良いだけかけるスタイル。

 

そして続けて、あられのふりかけられたご飯と、各種のお茶漬けの具の並べられたお皿が「ヤホ!」と出されてきた。以下の写真のセットだ。 

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わさび、昆布、じゃこ、たらこ、鮭切り身、漬物など、おおよそお茶漬けに入りそうなものが全て搭載されている豪華セット。この店にはメニューなど存在しないのは本当で、自動的にこのセットになるようだが、これだけ全てが揃っていたら何もいうことはあるまい。お茶漬けの決定版というか総集編というか、普通に嬉しいサービスだと思った。

 

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じゃあ早速いただきましょうかと、やかんから「だし」を注いでいたら、「あ、お漬物出してなかったね」とお漬物の小皿まで出てきた。どんだけ至れり尽くせりなのかと。そして、おばちゃんは普通に日本語で会話してくれる。ヤッホー国にまぎれこんだ日本人にとって頼れる通訳だ。しかし、オヤジは相変わらずヤッホーしか言わない。

 

お茶漬けは、うどんの「だし」をご飯にかけるようなタイプで、各種の具も揃っているし、これで不味かろうはずの無いという代物だった。お腹はけっこう一杯のはずなのに、さらっと食べてしまう。具の皿は大量に残ったままだ。ならばお代わりをせねばならんわけで、さっき覚えたばかりの「ヤッホー(=お代わりください)」の出番である。

 

僕は今まで生きてきて、飲食店でヤッホーという言葉を発した事がない。やったこと無い人にとっては、「ヤッホーと発しつつお茶碗を差し出す」という行為は案外むつかしい。

 

「ヤッホー…」

 

なんかぎこちなくなってしまった。おばちゃんはお茶碗を受取り、あられとごはんと入れてくれる。そして「お代わりヤホ!」と返してくれた。意味不明だが、通じると何か嬉しい。

 

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僕もヤッホーを使いこなせるようになったので、だいぶ店に溶け込んできたと言える。他の客もヤッホーばっかり言っているわけではなくて、連れとの会話は日本語でしている(そらそうだ)。聞いていると、会社とかの飲み会のあとに、同僚を連れてくるみたいなパターンが多そうだった。「私初めてなんですよ」「本当すごい店ですね~」みたいな。初めて来た奴が戸惑うのを見て楽しむ的な使われ方をするのだろう。それでこんな変な店にも関わらず需要が途切れないのだと思う。みたら、もう外には行列が出来ていた。恐ろしい。

 

繁華街から近いのと、味に関しては間違いないのも後押しになっている。22時30分オープンというのも絶妙だし、一律で730円とかそんな感じになっているのも計算が立ちやすくて良いのだと思う。部下を連れてきておごったりしてもちっとも痛くない。好きなだけお代わりしいや~てなもんである。

 

ちなみに、何故かこの店には、メニューが張り出されていて、お茶漬け以外にも「一口カツ」だの「天ぷら」だのと書かれているが、入店したら問答無用に「ヤッホー茶漬け」とよばれるお茶漬けフルセットを出されるわけで、「一口カツ」なり「天ぷら」なりは頼めないようになっている。「じゃあなんでメニューがあるんだ!?」と言いたいところだが、このお店の不思議からしたらどうでもいい疑問かもしれない。オヤジがヤッホーしか言わなくなる前には頼めたのかもしれない。入り口の看板に地酒の名前が入っているが、もちろん酒を飲むとかも不可能だ。飲めるのは「だし」だけ。

 

おばちゃんが「ヤホ」「ヤホ」と忙しくしている間、なぜかヤッホーオヤジは姿を消していた。まあ、作りおきの「だし」と、具と、ごはんを盛るだけだから、オヤジがすることもあんまり無いのかもしれないが一体どこへ?

 

ちなみにお会計する時は普通に「ごちそうさま」で通じる。「お会計ヤホ」とか言われて人数分お金を払うだけ。これすべておばちゃんがやる。オヤジはたしかに要らないかも。おばちゃんの義務的な「ヤホ」が悲しい。

 

そうしているうちにオヤジが戻ってきた。飯でも炊いていたのだろうか。そして僕が何回か「ヤッホー」とお代わりしているうちに、客の回転がわりと進んでいく。それでも途切れない行列。旅行客丸出しで初めて来たみたいな人たちも入ってくる。「あちゃー」とか思うが、何を隠そう僕も旅行客で初めての来店だった。

 

そうやって客が回転していくうちに、ヤッホーしか言わない謎のオヤジが突如として日本語で叫び出す。

 

「お客さん入れてぇーーーー!!!!」

 

普段「ヤッホー」しか言わない人が、いきなり日本語で叫び出すと、狂ったのかと思ってしまう。どうも、お客が会計を済ませたのに、外で待っている人がすぐに入ってこないと我慢できないらしい。数フレームでも遅延があると、おばちゃんに向かって「入れてぇぇーー!!」と叫び出すという局面が何度もあった。

 

そうするとおばちゃんは入り口までいって「どうぞ」とお客さんを案内する。その瞬間だけは普通のお店っぽいのだが、お客が席に着くとすぐ「ヤホ」「ヤホ」言い出す。もちろんオヤジはそれ以外はずっと「ヤッホー!」だ。

 

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結局、お茶漬けは4杯くらいおかわりした。カレーをはしごして、豚バラ定食を食って、やきとりをつまんだわりには食べた方じゃなかろうか。お茶漬けの偉大さを知った気がした。単純にヤッホー茶漬けが美味かったのもある。

 

次に金沢に泊まったら絶対に再訪したい店だとは思ったが、いつ無くなってもおかしくない店でもある。なにしろオヤジはけっこうな年齢である。おばちゃんも完全にヤッホーに疲れていた。臨時休業もけっこうあるらしい。

 

人気の老舗が後継者不在で潰れるとかよくあるけど、ヤッホー茶漬けは200%後継者がいない。いるわけがない。いたら僕は驚く。

 

↓ラジオでも喋っている。
moteradi.com

 

 ↓この日の軌跡。

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