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『殺人犯はそこにいる』勝手にドラマ化事件は著作権だけの問題じゃない!!!

年末にこのような記事を書いた。清水記者の『殺人犯はそこにいる』を流用したドラマがAmazonプライムビデオで配信されている事件についてのことだ。その後にいろいろの新聞やネットニュースでも話題になっていたのでもう随分の人が知ることになったかと思う。

 

現在、Amazonプライムビデオは公式にはだんまりを決め込んでおり、1月5日には件のドラマも最新話が何事もなく配信されたようだ。つまり現時点では著作権やなにがしの権利を侵害しているとは思ってなくて、仮に裁判などになったとて問題がないと踏んでいるのだろう。

 

ただ制作サイドからはいくつかアクションがあり、なかでも企画者でプロデューサーでありこのドラマの最高責任者でもある四宮隆史氏が、著者の清水記者にTwitter上で12月31日に公に直接のコンタクトをとった事が話題になっている。そしてその内容が物議を醸してもいた。以下にそのすべてを引用してみようと思う。

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 「はじめまして」だ。つまり『チェイス第1章』に関して清水記者が何の関与もしてないどころか、ドラマの企画制作の責任者である四宮氏と連絡を交わした事すら無いことが証明されている。「私個人の想い」と前置きしてあるが、「企画の責任者である私個人の想い」であるから、ドラマ制作の主旨と解釈するしかない。Twitter上では清水記者からの返信は無いが四宮氏の主張は延々と続く。

 

 

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そこまで尊敬・敬服・賞賛あるいは称賛している人物の著書を下敷きにドラマを作ろうという時に、相談どころか挨拶すらしないなどというぞんざいな態度をとることがあるだろうか。しかも問題にされて初めてTwitterで声かけるとか。四宮氏の褒め殺しにしか見えないがどうだろうか。これが世渡り力というやつなら呆れてものが言えない。

 

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出版当初にネタ元を読んでいるのを、番組企画者兼プロデューサーが認めている。つまり『殺人犯はそこにいる』の単行本が出た2013年に読んだという事だろうか。じゃあ何で2017年のタイミングでドラマ化を目論んだのかということだが、2016年に文庫化された同書が2017年にかけて、文庫Xキャンペーンなどもあって30万部を超えるベストセラーになっているのと無関係とはとても思えない。タイミング的には完全に合致する。

 

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我々法律家というのは、四宮氏自身が弁護士でもあるという意味だ。ネタ元である著者に無断でドラマ化しておいて、騒がれてから「はじめまして」なんて事をいってしまう問題について、法律家ならば気がつかないわけがない。「法的には問題ない」「裁判されても勝ちうる」という認識だったからだろう。法律知識の悪用という他にない。「危機感と自省の念」をもった法律家のやることだろうか。

 

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「このドラマはフィクションであり、実在の事件とは関係ありません」などとというテロップひとつで、実在の事件をほぼなぞったストーリーのドラマであることを隠蔽しまくっている側の代表がいう言葉とは思えない。ドラマ本編やその他の宣材のなかに、足利事件の「あ」の字も出ない。参考までにドラマ出演者による爆笑インタビュー(悪気は無いのかもしれないがすごい見出しだ)のリンクも貼っておく。

 

これを読んでも実在の事件を扱っていると匂わせる部分はほとんどない。

主演の大谷氏が「実際にこういう事件も歴史の中で起きてますよね」と発言しているところが、辛うじてそれっぽい部分ではあるが「歴史の中で」ではなく「今起きている」が正解だ。主演者すらその事実を知らないのか、口止めされているのかは知らないが、いずれにせよ納得のいかないプロモーションではないか。

 

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何度も言うが、それならなぜ足利事件に対する言及もなく、『殺人犯はそこにいる』や、その他の足利事件を扱った書籍(小林篤氏の『足利事件』や、冤罪にかけられた菅家さん自身の著書など色々ある)は一切紹介しなかったのか。また、そういった関係者に相談するといったことも無かったのか。権利を主張されたり、内容に口出しをされるのが面倒だったからだと推測してしまう。

 

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清水記者に対して「お前の本だけじゃない」と言ってるとしか思えない。法的にグレーを突いているとよほどの自信があるのだろう。言っているような崇高な目的があるのなら、先に上げたような軽薄なプロモーションになるわけがない。

 

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現状のやり方は、事件にかかわったジャーナリストや、事件の被害者たちの誰の想いにも応えてないし、そういう自負があるなら誰かに挨拶や相談くらいはしているはずだ。今回の事件に関しては、エンタテインメントの世界で飯を食っている人間の嫌な部分しか見えてこない。法的にどうなるかは知らないが「話題になればよかろう」という下心しか伝わってこない。

 

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12月31日にわざわざこの発言をしておいて1月5日に新エピソードの配信開始。何を重く受け取って、どう反省したのか。これを理解できる人はいないと思う。

 

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これがディレクター業のかたわらで法律を学び、弁護士資格を取得するに至ったやり手プロデューサーの仕事の進め方というやつなのか。

 

ついでなので以下に四宮隆史氏の著作のAmazonリンクも貼っておこうと思う。知的財産法にずいぶんと詳しいそうだ。エンタテインメント業界で、法律知識と資格を大いに役立てているらしい。今回の案件もその一貫か。知的財産を守ろうという姿勢は全く伝わらない。法律を徹底的に利用する側なのだろう。

小説で読む知的財産法―最新知財ビジネスの法実務

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ドラマの企画・制作を行ったジョーカーフィルムズが、1月1日に出した声明文も見てみよう。

このドラマは複数の文献や判決文等に記載された、客観的に明らかとなった周知の事実を踏まえて「架空の物語」を創作したものであり、特定の書籍に依拠したものではありません。
また、特定個人の創作的表現を用いることも行なっておりません。あくまでフィクションの作品として描いております。

上に引用した声明文を読めば明白であるが「ノンフィクションは事実の記録なんだから、客観的に資料の一部であって、そこに著作権なんか無いだろ」と真っ向から対決する姿勢である。知的財産権に詳しい四宮隆史氏が自信をもって臨んでいるのだから、かなり勝算があるのに違いないが、法的にどうあれモラルを欠いた行為であることは変わらない。

 

今回のドラマ事件は、単純に著作権の問題では済まない。何度も書くが、実在の事件とほとんど同じ形にもかかわらずフィクションと言いきり、関係者への一切の配慮もなくドラマ化してしまったのは大いに問題だ。しかも遺族や被害者(冤罪被害者の菅家さん含む)の多くが存命であり、真犯人も捕まっていない現在進行系の事件である。

 

エンタテインメントにはエンタテインメントの責任というものがあるのではないか。「フィクションです」というテロップ一本で責任を果たせるような簡単な事ではないはずだ。

 

まさか今回の騒動も含めて「足利事件」を世に知らしめるための活動というわけでもあるまい。そんな炎上商法の言い訳を許してはいけない。

 

脚本家の福田靖氏は劇場版『海猿』や人気になったNHK大河ドラマ龍馬伝』の脚本家だ。四宮隆史氏の会社に所属しマネージメントを受けている。パクりを知らずにこれだけ似せるのは難しい。そもそも「複数の文献」「明らかとなった周知の事実を踏まえて」などと公式に発表もあったわけだし、それが『殺人犯はそこにいる』に何割依存しているかなんて明言はしていない。客観的にドラマを観るかぎり、かなりの部分を利用しているように思えるのだが。

 

「資料として」使われた「客観的にあきらかになった事実」と片付けられた中には、決して軽々しくエンタテインメントとして使ってほしくなかったモノも、たくさん含まれていたはずだ。彼らはそれすら確認しようとはしなかったということだ。

 

責任者の四宮隆史氏をはじめ脚本家の福田靖氏、そして主演俳優などなど、ドラマの関係者たちは、注目さえ集まればなんでも良いと思っているのだろうか。その時は知らなかったという人もいるかもしれないが、これだけ批判を受け散るわけだし、今更シラをきり続けるなら同罪と言われても仕方がないと思う。知ろうとしないことは罪だ。

 

足利事件(冤罪を証明した一冊のこの本) (講談社文庫)

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殺人犯はそこにいる (新潮文庫 し 53-2)

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冤罪 ある日、私は犯人にされた

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これらを読んで、軽々しくエンタテインメントにして良いと思ったとすれば、相当に軽薄ではないだろうか。

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