そうとう久しぶりの阪急の豊中駅に行ってみた。目当ての一つが駅前のビルにある『酒とめしらっきぃ』だった。
連れて行ってくれたのは元三田へたれぃでぃおのまさと氏。彼に会うのも久しぶりだった。一年ぶりくらい?半年ぶり?
酒とめしらっきぃは、ビルテナントの目立たぬ飲食店のひとつという佇まい。自分だったらまず選択肢に入らないかなというお店に見えた。ひたすら地味だもの。看板の瓶ビールの安さだけは目を引くので、他に余程……という状況なら入るかもしれない。それくらいのお店。
店内は和風の蕎麦屋みたいなボックス席がいくつかあって、厨房側の仕切りがちょい低くなっており、店員が厨房から各席に直接アクセスできるようになっているという風変わりな作り。
厨房側には大小の惣菜類が並べてあってまるで立ち飲み屋みたいな塩梅なのであるが、今の説明の中には立ち飲み要素がなかったのはお分かりだろう。厨房側に隣接してる席だと写真のように、並べている惣菜類だのメニューだの見れるのだが、それ以外の席からは全く何も見えないのもポイントか。
まさと氏と席についた途端に、お店のオヤジがお盆にのせた枝豆やらなんやらのメニューをあれこれ見せてきて、これは200円とか言ってきた。とりあえずそれは貰わないことにして、大瓶ビールを注文。あとは卵焼きと焼きそばも注文。焼きそばが看板メニューらしいので。他のメニューがだいたい200円前後という立ち飲み価格なのに対して、焼きそばの380円というのが輝いて見えた。卵いりだとさらに50円マシ。
このような蕎麦屋スタイルの店内。そしてお客は我々だけという謎空間。
大瓶は普通。とくにキンキンとかでもないが大瓶は裏切らないから良い。税別とはいえ390円は頑張ってる方だろう。
卵焼きは驚いたことに甘めの関東スタイル。なんでだ。だし巻き卵が覇権の関西では滅多にお目にかからない味付けだった。
そうこうしてるうちに看板メニューの焼きそばが来る。
「ここの看板メニューは日清焼きそばなんです」
まさと氏がさかんに説明してくれていた。日清焼きそばを看板メニューに掲げるくらいなのだから、相当な工夫が凝らされているに違いないと思って注文した。本当の日清焼きそばを食わされるだろうと。「じゃあ今まで食べてきた日清焼きそばは何だったの!?」というセリフが言いたかった。なんせ200円くらいのメニューが並ぶ中で380円の日清焼きそばだ。メニューの中において光り輝いて見えた。
来たのがこれ。
日清焼きそばやん!!!
間違ってない。ものすごく間違ってない。どこからどう観ても純度
98%の日清焼きそば。キャベツが少しだけ入っているのがむしろ「惜しい!」と思わせるほどの逸品だった。
「まさか…」と恐る恐る食べてみると、いつも食べている日清焼きそばだった!!!しかもどっちかっていうと雑に作った感じの…。キャベツの切り方も大雑把だし…。
まずいということはない。日清焼きそばだもの。ビールに合うか合わないかといえば、日清焼きそばなので合う。老舗ブランドのプロダクトに恐れ入るしかなかった。
こんな日清焼きそばをつまみつつビールをいただいきながら考えた。
「これが看板メニューとはどういうこと?」
秘密は値段にあると思われた。税抜380円という設定は、他の安いメニューに対してお高め。それに対して日清焼きそばというのは、5袋入りなんかを買えば、1袋あたり末端価格で80円するかしないかで仕入れ可能。具はキャベツ数枚だからほどんど原価がかかってない。何が言いたいかというと、お店にとって利益確保の柱になっている可能性があるのだった。つまり看板メニューというのはつまり、大黒柱メニューなのかもしれない。このお安く飲めるお店を愛しているなら、おまえら日清焼きそばを頼めよ、と。そういう形の看板メニューもあって良いのかも。
我々は勝手にそう了承した。この日清焼きそばは、いわば自主的テーブルチャージ料みたいなもんだ。だったら50円の卵もつけたら良かった。会計をしてもらったらトータルものすごく安かった。みれば奥の座席に新しいお客さんも入ってきている。らっきぃを憩いの場にしている庶民は多いのだろう。立ち飲み屋の価格で広々とした席で飲めるし。阪急の豊中駅周辺にこんな安いところはあまりない。